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うっそうと生い茂る広大な森。緑が風にゆれ、ざわざわと耳に心地よい音を立てている。
そこにはさまざまな動植物が生息している。
その森の中心にある平野。
そこには町が存在していた。
規模は小さく、村と呼ぶ方が適当と思える程だ。
町と森との間の平野部には、粗末な作りの小さな小屋が一軒寂しく建っていた。
小屋は薄い木の板でできており、隙間風もおおいに入ってくる。
そんな小屋の中には生活に必要最低限の家具とベッド、そして小さな小屋には似合わない大きな本棚が置かれていた。
窓から小屋の中に光が差し込み、ベッドを照らす。
そのベッドから、むくりと少女が顔を出し、眠い目をこすりながら体を起こした。
「朝…なのね」
この小屋には窓が一つしかない。
もともと居住用に作られた建物ではないため、当然である。
そのため、太陽の光以外に彼女の体を照らす光は無い。
光を浴び、その桜色の目を細める。
太陽に照らされた少女の髪は美しい銀色をしていた。
髪が光を反射し、美しい煌びやかな光を放つ。
「はぁ…ついにきちゃったのね…」
大きなため息をつく少女。その表情はとても暗く、声にも活気が無かった。
その理由は一つ。
今日は町へ出なければいけないからだ。
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