ファーストコンタクト

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「あ、キイチいた!翔太君久しぶりだね」 「リサちゃん、昨日廊下でしゃべったじゃん」 「知らない!あはは」 リサが戻ってきた。 また連れまわされるんだろうか。 俺がめんどくさくなって壁に据えてある椅子に座った時、さっきの制服の子たちが見えた。 バーの隣の、フロアに降りてくる階段の上にいる。 一人、じっとこっちを見ている子がいた。 俺の方を見ながら降りてくるのだが、顔がはっきりと見えない。 「キイチ!和音来たから会いに行くよ!」 いきなりリサに腕を引っ張られる。 そうだ、和音だ。 さっきの制服の子は二宮和音。リサと同じ中学だった子だ。 引かれるままにリサについていく。 階段に近付くと、ちょうど二宮和音たちも降りてきていた。 その時に、俺は初めて気づいた。 こっちを見ていたのは二宮和音じゃない、もう一人のほうだ。 その子は、二宮和音の後ろについてフロアに降りる。 俺たちは階段のすぐ手前で対面する。 その瞬間、 俺は動けなくなった。 なんてきれいな子なんだろう。 一瞬、時が止まったように、俺の眼は釘で付けられていた。 このクラブで一番大きなビートが俺の心臓から聞こえた。 その瞬間が始まりだった。 そこからすべてが動き出していた。 運命は時々、ものすごくわかりやすい姿で現れる。 それは、神様の気まぐれなのか、濁流の一部なのか。 とにかく俺は、その瞬間に運命を感じていた。 フロアにはいつのまにかBEPのWHERE IS THE LOVEが流れている。 前言撤回。今日のDJは最高だ。
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