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風が吹く
鳥が飛ぶ
江戸で見る景色は
楽しかったあの頃と
なんら変わりはしないのに
俺達はいつからこうなってしまったのだろう…
「……総司、俺は北へ行こうと思う」
「そうですか……
また寂しくなりますね」
「すまねぇ、お前を連れて行けなくて」
「謝らないで下さい
私はもはや、刀を握ることさえも出来ない体です
仕方ないですよ
それに、私達は決めたじゃないですか
江戸を発ったあの日
“もう戻らない”って」
「あぁ、そうだったな」
「だからもう、後ろを振り返らないで下さい
貴方は貴方の信じた道を行けばいいんですよ」
「…今日は見舞いと報告のつもりで来たんだが、
どうやら俺は病人から
逆に励まされたみたいだな」
「……土方さん、いってらっしゃい
世の情勢など、難しいことは分かりませんが
私はただ貴方が生きて帰ってくるのを待ってます
一年でも二年でも…
私は貴方が帰って来るまで、生き続けますから」
「約束だからな」
「はい」
「じゃあ、そろそろ行くな」
「また生きて必ず会いましょう」
「ああ」
だが、この約束が果たされることは無かった……
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