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コンタクトを外した和也は、再度周りを見渡す。
「ホントに見えるな。」
「だろ!?凄いよなぁ。」
本当ならば、いきなり全く知らない場所に来てしまったのだ。
相当の不安や恐怖があっても不思議ではない。
むしろ、当然の事だろう。
しかし、浩紀にはそれがなかった。
いや、少しはあったかもしれないが、今はワクワクや、好奇心がそれを上回っていた。
しかし、和也は正直不安だった。
ここはどこだ?何で俺が?帰れるのか??
持ち前のポーカーフェイスで表情には出さないが、心の中はいろんな気持ちでごちゃごちゃしていた。
それなのに、脳天気にはしゃいでいる浩紀を見て、何かがキレた。
「ふざけるな!!」
気づいたら怒鳴っていた。
浩紀は、長年付き合ってきた親友の初めての怒鳴り声に肩をビクつかせて、キョトンとした顔で和也を見た。
和也は一瞬、罪悪感をおぼえたが、勢いは止められない。
「今の状況がわかってるのか!?全く知らない場所にとばされて、帰れるかもわからない!!そんな、脳天気に騒いでる場合じゃないだろう!!」
少し荒くなった息のまま、浩紀を睨む。
しかし、返ってきたのは、さっきまで騒いでいたとは思えない不安そうな笑みだった。
「和也が不安を感じてるのはわかってた。ポーカーフェイスで隠してるつもりだったみたいだけどな。
だからこそ、脳天気に振る舞った。俺まで不安そうにしたら、連鎖になって止まらなくなるから。
俺だって少しは不安だよ。でも、過ぎた事をどうこう言ってもしょうがない。今を受け入れるしかないんだよ。」
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