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……
「随分歩いたけど全然人いないな…」
浩紀のぼやきに和也も、
「確かに、かれこれ2・3時間は歩いてるのに、いたのは四足で歩く魚とか二本首の鳥くらいだからな」
と答える。
二人は、今は森の中の、少し拓けた草原にいた。
「でも面白かったからいいじゃん」
笑いながらそう言うと、浩紀はその場に寝転んだ。
「なんか、あとは卒業して、社会に出て、年取って行くだけだと思ってたから……こんなのも、けっこういいなって思う」
浩紀は透き通るような青空を見上げながら、
静かに呟く。
「たしかに、大学に行ったとしても、学生なんて名ばかりの、社会人予備軍でしかないからな」
そう言いながら、和也も腰を下ろす。
「でも、俺らって帰れるのかな……?」
「さあな?ただ、来る方法があったんだから、
帰る方法もあるはずだろう?」
今度は、不安げな浩紀を和也が宥める。
しばし、静かな時間が二人に流れる。
「「ッ……!?」」
しかし、それは、二人の真上を巨大な影が通る事で、壊された。
二人は、勢いよく立ち上がると、その影の主を目で追った。
すると、その影は巨大な鳥のようであり、鳥の上に、人影のような物が、微かに見えた。
そして、それは徐々に下降していく。
「和也、あれに人が乗ってなかったか!?」
「たしかに、それらしい影は見えたが……」
浩紀が驚いたように言うと、和也もア然としながら答え、鳥の降り立った方向を見ていた。
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