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浩紀は左足に力を込めて急ブレーキをかけると、
その力を爆発させるように床を蹴り、相手の右小手を狙う。
しかし、相手は浩紀の小手打ちを打ち落とし、がら空きの面を打ちにいく。
浩紀はそれを咄嗟に首を傾けて避け、相手にくっつき再び鍔競り合いに持ち込む。
その攻防は、まるで観客に瞬きを許さず、
呼吸までも忘れさせるかのようなものだった。
「分かれ」
少し鍔競り合いの時間が長かったので、審判が距離をとらせる。
相手は再び上段に構え、浩紀もそれに合わせて若干中段を上げる
まるで、ここでキメると言うかのように、
お互いの集中力が高まっていく。
「始め!」
「めぇぇん!」
始まった瞬間、不意をつくかのように、相手は空気を裂くかのような渾身の面打ちを放った。
だが、浩紀はまったく動じなかった。
自分の竹刀を擦り上げるように、相手の面打ちを受け流し……
「どぉぉぉ!!」
バチィィン……
雷鳴のような音を残しながら竹刀を横に薙ぎ胴を打ち抜いた。
三人の審判が浩紀を表す白い旗を一斉に挙げた。
「胴あり!勝負あり!!」
審判が浩紀の勝利を告げる
『ありがとうございました』
その瞬間、静寂に包まれていた体育館に、大歓声が響いた。……
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