第一章

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浩紀は左足に力を込めて急ブレーキをかけると、 その力を爆発させるように床を蹴り、相手の右小手を狙う。     しかし、相手は浩紀の小手打ちを打ち落とし、がら空きの面を打ちにいく。     浩紀はそれを咄嗟に首を傾けて避け、相手にくっつき再び鍔競り合いに持ち込む。     その攻防は、まるで観客に瞬きを許さず、 呼吸までも忘れさせるかのようなものだった。     「分かれ」     少し鍔競り合いの時間が長かったので、審判が距離をとらせる。     相手は再び上段に構え、浩紀もそれに合わせて若干中段を上げる     まるで、ここでキメると言うかのように、 お互いの集中力が高まっていく。     「始め!」   「めぇぇん!」     始まった瞬間、不意をつくかのように、相手は空気を裂くかのような渾身の面打ちを放った。     だが、浩紀はまったく動じなかった。     自分の竹刀を擦り上げるように、相手の面打ちを受け流し……   「どぉぉぉ!!」   バチィィン……     雷鳴のような音を残しながら竹刀を横に薙ぎ胴を打ち抜いた。     三人の審判が浩紀を表す白い旗を一斉に挙げた。     「胴あり!勝負あり!!」  審判が浩紀の勝利を告げる    『ありがとうございました』     その瞬間、静寂に包まれていた体育館に、大歓声が響いた。……
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