“眼”を得た少年

20/96
300人が本棚に入れています
本棚に追加
/293ページ
「いってー。ったく、危ないったりゃありゃしない」 それは一瞬の出来事だった。“岩が落ちてくる”と視認した瞬間、横に飛び跳ねたのだ。 運動神経は鈍い方だが人間、火事場の馬鹿力で結構乗り切れるみたいだ。 着地に失敗した為か、派手な運動を行った為か、頭が痛い。 「失敗だな。岩を落とした後に縛っておけば、確実に僕を殺せたのにな」 勿論、殺されるのはよろしくないが、失敗に対する意見は(特に勝った側の場合)言ってみたくなるものだ(特に厭味な言い方で)。 「んじゃ、お前の師匠とやらに合わせて――――」 ドクン 土は赤く、少年は動かない。喉には深々とナイフが刺さり、瞳孔は開きっ放し。 「じ、自決!?」 うわっ!そんなに嫌だったのか?まさか自ら命を絶ったなんて、相当悔しかったのだろう。 「はは。ったく、そんなんなら襲うな――――て、あれ?」 ドサッと派手に転倒する。何だか痛いと思っていた頭を擦る。 手は赤く染まり、瑞々しい感覚が腕を伝わって意識に唱える。怪我をしているぞー、と。 「はは、最近……こんなのばっかし、だよ―――な」 意識は黒く黒く、視界は暗く暗く。幕を下ろすように、緩やかにdownしていった。 『ヤァ』 ふと、僕は目を覚ました。そこはとてつもなく白く、その白さ故に気が参りそうだった。 そして、目の前には奇怪な声の主がいる。 「お前が、僕に語りかけてきていた奴か」 『ウン。デモ、真逆君ガアソコマデ出来ルナンテネ』 「え?」 『ソウソウ、自己紹介ガ未ダダッタネ。僕ハ“パンドラ”。禁断ノ箱ヲ模シタ霊長ノ使者サ』 「し、しゃ……」 コクリとアイツが頷く。 『ソウ。君ガ掴ムベキ“力”ヲ得ルマデノ道案内ヲ頼マレタノサ』 「ちか……ら」 『君ハ“無限”ニナル資質ガアル。君ノ存在ハ霊長ニトッテ必要ニナルノサ』 「ちょっ、意味分かんないんだけど」 『後々分カルサ。今近クニ“導ク者”ガ来テイルカラ、ソコデバトンタッチサ』 「導く……者」 『君ニ宿ッタ“力”ノ所為で、君ノ世界ハ反転スル。多分……次ニ目ヲ覚マシタラ、君ハ世界ノ原型ヲ知ルダロウ』 「世界の……原型?」 『ソレハネ……、オット。モウ君ガ目ヲ覚マス時間ダ』 と言うとアイツは手を叩いた。 「そ、そんな……未だ何も分かって」 『良イカイ?君ガ見ル物ハ現実ダ。受ケ止メルシカ無インダヨ』 その言葉と同時に、僕の意識は引き戻された。
/293ページ

最初のコメントを投稿しよう!