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「いってー。ったく、危ないったりゃありゃしない」
それは一瞬の出来事だった。“岩が落ちてくる”と視認した瞬間、横に飛び跳ねたのだ。
運動神経は鈍い方だが人間、火事場の馬鹿力で結構乗り切れるみたいだ。
着地に失敗した為か、派手な運動を行った為か、頭が痛い。
「失敗だな。岩を落とした後に縛っておけば、確実に僕を殺せたのにな」
勿論、殺されるのはよろしくないが、失敗に対する意見は(特に勝った側の場合)言ってみたくなるものだ(特に厭味な言い方で)。
「んじゃ、お前の師匠とやらに合わせて――――」
ドクン
土は赤く、少年は動かない。喉には深々とナイフが刺さり、瞳孔は開きっ放し。
「じ、自決!?」
うわっ!そんなに嫌だったのか?まさか自ら命を絶ったなんて、相当悔しかったのだろう。
「はは。ったく、そんなんなら襲うな――――て、あれ?」
ドサッと派手に転倒する。何だか痛いと思っていた頭を擦る。
手は赤く染まり、瑞々しい感覚が腕を伝わって意識に唱える。怪我をしているぞー、と。
「はは、最近……こんなのばっかし、だよ―――な」
意識は黒く黒く、視界は暗く暗く。幕を下ろすように、緩やかにdownしていった。
『ヤァ』
ふと、僕は目を覚ました。そこはとてつもなく白く、その白さ故に気が参りそうだった。
そして、目の前には奇怪な声の主がいる。
「お前が、僕に語りかけてきていた奴か」
『ウン。デモ、真逆君ガアソコマデ出来ルナンテネ』
「え?」
『ソウソウ、自己紹介ガ未ダダッタネ。僕ハ“パンドラ”。禁断ノ箱ヲ模シタ霊長ノ使者サ』
「し、しゃ……」
コクリとアイツが頷く。
『ソウ。君ガ掴ムベキ“力”ヲ得ルマデノ道案内ヲ頼マレタノサ』
「ちか……ら」
『君ハ“無限”ニナル資質ガアル。君ノ存在ハ霊長ニトッテ必要ニナルノサ』
「ちょっ、意味分かんないんだけど」
『後々分カルサ。今近クニ“導ク者”ガ来テイルカラ、ソコデバトンタッチサ』
「導く……者」
『君ニ宿ッタ“力”ノ所為で、君ノ世界ハ反転スル。多分……次ニ目ヲ覚マシタラ、君ハ世界ノ原型ヲ知ルダロウ』
「世界の……原型?」
『ソレハネ……、オット。モウ君ガ目ヲ覚マス時間ダ』
と言うとアイツは手を叩いた。
「そ、そんな……未だ何も分かって」
『良イカイ?君ガ見ル物ハ現実ダ。受ケ止メルシカ無インダヨ』
その言葉と同時に、僕の意識は引き戻された。
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