Tedious1

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昼の一時 いつもの喫茶店に向う 人混みは嫌いだ。 いつも流されて帰れなくなるような気がするから 早く人混みを抜けたい 人混みを切り開いて、堂々と歩いていけたらスカッとするだろうか。 いや、有名人でもないのに注目を浴びそうで嫌だな ただでさえ注目を浴びやすいのだから、俺は。 常に小さな女の子を連れ回しているからな。 別に監禁してるわけじゃない 強制もさせてない こいつが俺の所有物と言うだけだ 彼女を見下ろす。 彼女はいつも通り可愛いその大きな瞳で俺だけを見上げて… 「…。」 …あれ、いない。 「か、カズ…。」 所有物の声が遠くから聞こえた 人混みのせいで、いつのまにかはぐれたようだな 振り返ると、足が竦んで動かないのか涙目の彼女が震えていた 相変わらずだな 甘えん坊で、俺に依存しっ放し 愛しい とても愛しい いじめてやりたい。 彼女にとって今一番聞きたくない言葉をかけてやる 「おいで。大丈夫だろ?」 ほんの少しでも俺から離れると、あいつは動けない 極度な人間不審。対人恐怖症 現在、あいつは確実に、耳を疑ったはずだ 嫌々するように首を左右に振って、懇願するような縋るような瞳で俺を見る ぞくぞくした どれだけ俺の心を煽れば気が済むのやら 「俺の言うことが聞けないのか?」 優しく言っただけなのに、所有物は体を大きく震わせた 「おいで?」 もぅ一度言うと、置いていかれるとでも思ったか目を瞑って走ってきた 可愛い そのまま走り去って行かせても楽しそうだが、さすがにそこまではしないでやる 後で大泣きして手が付けられなくなってしまう 意外にわがままで大変なんだ まぁ、それが可愛いんだが どんなことをしても、俺しか信じられない可愛そうな子 俺だけの所有物 受けとめて抱き締めてやった 「意地悪…カズはチェンのこと嫌いなんだ」 拗ねはじめたようだな いじめたい。このままここに置いておいて泣かしてやりたい けど、こいつも頑張ったんだ。 よくできた犬…というか猫だな 猫はちゃんと誉めてやらないと 「嫌いじゃないよ、チェン。よく頑張ったな」 「ん。チェンいい子?」 いつもの潤み気味の目が不安そうに俺を見る 親じゃないが、我ながら親馬鹿かもしれない 可愛くて可愛くてたまらない 「いい子だよ。ご褒美あげる。」 飴を一つポケットから取出し、手に乗せてやった
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