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――声、聞きたかったな。
どういう意味なんだろ。
おばさんが否定するようなお母さんって。
おばあちゃんを見ると、困ったように笑い、
『あんなんじゃなかったんだけどねぇ』
『……え?』
『あのね』
おばあちゃんは座って、俺と同じ視線にする。
『度々ね、慎のお母さんと会ってたの』
『…なんで俺には…』
『慎には、会いたくないって』
『――え…』
おばあちゃんの目が、キッと慎の目をしっかり捉える。
『慎』
目を逸らすことは出来たのだろうけど、出来なかった。
『何かしらの理由があるとね、人って変わっちゃうの。
どんなに他の人に何言われようと、自分が決めたら頑固として変えない。』
その目は、怖い。だけど、だけど――
『そうやってね、色んな人を泣かせるの。
迷惑かけて、泣かせて、困らせて、それで自分がボロボロになる。』
『……それが…お母さん?』
うん、とおばあちゃんは頷く。
『人を悲しませる人は、自分が本当は悲しいからそうしちゃうの。
――わかってあげて。
お母さんは、慎を見捨てたんじゃない。好きだから、好き過ぎて、大好き過ぎたから、不幸にしたくなかったんだよ?』
訴えるような目に、頷くしかなかった。
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