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スキップしたい気分になりながら、それを落ち着かせて歩く。
散歩って言うよりも、嬉しさのあまり騒ぎそうだから、気分を落ち着かせる為なのかもしれない。
俯きながら歩いていた時、前から影が見えた。
顔をあげると、あげたことを後悔した。
きれいだったのだけど、化粧が厚くて、嫌な感じ。
真っ茶色の髪の毛が派手さを表してるような気がした。
通り過ぎようと、少し足を速めた時、
『――あれ?』
女の人が立ち止まる。
思わず慎も振り返った。
目が合うと、女の人は片手を口元にあて、
『…慎?』
『――え』
『慎、慎だよね?』
タタタと、かなり高いハイヒールで器用にこっちに走って来る。
『やっぱり慎だぁ!!』
ニッコリ笑うと、膝を折って慎を抱き締めた。
『元気だった?背ぇ伸びたね。なんか顔つきもかっこよくなった!!』
『え、あ、あの…』
どちら様、と聞こうとしたが、
『会いたかった。……すっごく会いたかったよ、慎』
聞き覚えのある声に、その『慎』に温もりを感じて、この人がお母さんなのだと悟った。
『…お母さん……?』
相手はうんうんと何度も頷く。
『覚えててくれたんだね。本当に嬉しい…』
――こんなのって……
会えた嬉しさよりも、まるで別人のお母さんへの嫌悪感の方が、大きかったかもしれない。
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