4/17
前へ
/153ページ
次へ
『――慎くん…』 知らないおばさんが、慎を抱き締める。 雨の中、傘もささずに遠ざかっていく人。 お母さんが、行っちゃって―― 『お母、さ』 『お母さんね』 こっちを向かせられた。 『…お金がね、ないんだって』 おばさんが涙目で。 その後ろには、女の人と男の子。 『だから、慎は、少しの間、一緒に住もうね?』 『……お母さんは?』 『お母さんは、他の所に行っちゃうの。でも絶対帰ってくるから。待っててあげて?』 意味がわからない。 だったらそのぐらい、連れて行ってくれればいいのに。 『慎がお母さんの事信じてるなら、絶対に帰って来てくれるよ?だから、ね』 頷くしか、ない。 ――小学2年生。 何も知らないまま、俺はおばさんの家に泊まる事になった。  
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

274人が本棚に入れています
本棚に追加