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『――慎くん…』
知らないおばさんが、慎を抱き締める。
雨の中、傘もささずに遠ざかっていく人。
お母さんが、行っちゃって――
『お母、さ』
『お母さんね』
こっちを向かせられた。
『…お金がね、ないんだって』
おばさんが涙目で。
その後ろには、女の人と男の子。
『だから、慎は、少しの間、一緒に住もうね?』
『……お母さんは?』
『お母さんは、他の所に行っちゃうの。でも絶対帰ってくるから。待っててあげて?』
意味がわからない。
だったらそのぐらい、連れて行ってくれればいいのに。
『慎がお母さんの事信じてるなら、絶対に帰って来てくれるよ?だから、ね』
頷くしか、ない。
――小学2年生。
何も知らないまま、俺はおばさんの家に泊まる事になった。
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