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そこには中学生のお姉ちゃんの萌と、小学5年生の龍がいた。 どっちにしたって年上だから、呼び捨てにするわけにはいかなくて、くんちゃん呼びしていた。 『ねぇ龍くん』 『ん?』 『慎ってどうしてここにいるの?』 『…さぁ…。なんでだろうね。 それよりさ、自分の事名前で呼ぶのやめな』 『え?』 『自分の事、慎って言わないで、俺って言いな』 『俺?』 『うん。その方がいいよ』 『…わかった』 龍には、そんな感じで話を逸らされるし、萌には、 『慎君はホントにかわいいなぁ』 『…うん。それで、ね』 『ねぇ慎君。ずっとウチん家にいなよ。大歓迎だよ?』 そうやって、なんとなく逸らされていた。 お金がないから、だからなんで自分が、――俺が、ここに来たのかなんて、全然わからない。 ただ、聞いてもずっと逃げられているから、きっとあまりよくないことなんだと段々わかってきて、もうそれから、あまり聞こうとはしなかった。  
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