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とてもとても小さかった頃から、愛砂は表情の乏しい娘だった。
それでもあの頃よりは笑っていたと思う。
―――― そうあの頃よりは……。
愛砂が死を望むようになったのは、小学校低学年の頃のイジメがきっかけであった。
よくある話だった。
ある朝、それは始まった。
扉を開くと、クラス全員からの集団無視と教室に訪れた静寂(しじま)、自分に集中する視線。
部屋の中央に放置された愛砂の机には、呪咀の如く悪意ある言葉の羅列が書き込まれていた。
どこからか忍び笑いが洩れ、周囲に伝染していく。
耳から離れない。
あの声……。
吐き気を催す、皆の笑み。
―――― そうか、次はあたしなんだ……。
―――― あたしが次の的なんだ……。
すぅっと心が冷たくなるのを感じた。
屈辱だった。腹立たしく、悲しく……同時に恥ずかしかった。
心がスカスカになったような、何かを失ったようなあの感覚……。
イジメは毎日のように行われた。
持ち物は隠され、愛砂に聞こえるように悪口は言われ、根も葉もない噂が広がっていった。
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