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その質問に、アペイロンは複雑そうに笑った。
「神……と呼ばれるのは確かですが、私はここの管理を任された下級の存在に過ぎません。ですから、全てを変えたり動かすほどの力はないのです。私も以前は人でした……死してこちらへと参り、浄化されるはずでした。しかし……私の想いが強すぎたために、浄化ができず、エリュシオンで新たに生きていくこととなったのです……そして千年、こちらで生き、殿上人達により神へと召し上げられました。死んだ魂は、千年経つと神になるのです」
アペイロンは、絶え間なく降り注ぐ花弁の雨から愛砂を守るように、傘を傾けた。
いつの間にか、降り注ぐ花弁は鴾色から赤銅色に変わり、はらりはらりと水面に落ちては消えていく。
「……殿上人? 貴方より上の立場の方がいらっしゃるわけですね?」
「ええ。殿上人とは天界の方々の事です。そして全ての神と呼ばれる方々の最上に位置するのが《天帝》と呼ばれし御方であらせられます。エリュシオンよりも遥か彼方にいらっしゃるのです。ここも、天帝により作られた、天界と地上の狭間にありし世界なのですよ」
この世界の事はなんとなくわかってきたが、まだ愛砂にはわからない事があった。
何故死んでも尚、生きるのか……。
「死んでも尚、何故生き続けるの?……浄化出来ない程の想いって……」
「……愛しい人を……エスペランサ、貴女を守りたかったからです……例え想いが叶わずとも……生まれ変わっては守れませんから……貴女に逢いたくて、守りたくて、私はここで生き続けていたのです」
アペイロンはそう言うと、愛砂を真っ直ぐに見つめた。
交錯する二人の視線。
一瞬、時が止まったような気がした。
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