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正直嬉しかった……。
しかし、愛砂にはその想いよりも強い願いがあった。
「……ありがとうございます……でも、あたしはそのお気持ちに答えられません……あたしは死を望んでいるから……」
声が震えていた。
「あたしが貴方にお会いしたかったのは、貴方を愛しているからではないの……何でもできる貴方なら、あたしを殺すこともできるだろうから……自分で死ぬことも、上手く生きることもできない。
そんなあたしを、貴方に殺して欲しかったから。
あたしの存在や皆に残っているあたしの記憶を、消し去ってほしいからなんです」
スローモーションのように、幾枚かの花弁が横切った。
俯き、震える愛砂の手をそっと握り、アペイロンは微笑んだ。
「存じております。貴女の想いも願いも。
……しかし、私は貴女殺すことはできません。生きていてほしいから」
その言葉は、愛砂の心に波紋を落とした。思いもよらぬ言葉。
波紋は広がり、自分勝手に言葉が零れた。
「……な……ぜ?」
失望が胸を締め付ける。
「ご存じならば、何故生きろと言うのです!? 生きる権利があるのなら、死ぬ権利もあっていいじゃない! 家族にも疎まれ、家にも学校にも居場所はない。誰にも望まれないあたしに、どう生きろというの!?」
感情と共に涙が溢れだす。
「あたし、生きづらいの……」
溢れだす涙は、切々と過去を映し出す。
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