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寺には車で向かった。
入口には袈裟を着た男が立っている。
「初めまして藤崎さん。住職の柄沢一世と申します」
一世は深々とお辞儀をした。
2人とも、新しい住職を見たのは今日が初めてだった。
流花は彼のこの全てを見透かされそうな大きな目をじっと見つめてしまった。
一世は彼女に微笑む。
「あなたが流花さんですね?息子から色々聞いています」
「はい…え?」
流花は目を丸くして素っ頓狂な声をあげた。
家の2階から見覚えのある赤毛の少年が満面の笑みで手を振っている。
「柄沢…君」
流花は苦笑いを浮かべた。
「なんだ知り合いか」
「息子と同じクラスのようで。仲良くさせていただいていると聞きましたよ」
ぽかーんと口が開いている流花の代わりに一世が答えた。
「ささ、こちらへどうぞ。御親族の方々ももうすぐお見えになるはずです」
一世は2人を招き、本堂へと入った。
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