〔第1章〕高校生にだって事情があるはず

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蒼い空… 白い雲… 美しく広大な海原のかわりに、雑に整備されたグラウンドが広がっている。それが見えるのは、我等が蒼翔高校、4階建て校舎の3階、地上数メートルの高さからである。 「…だから故にこの4XマイナスY2乗シータの範囲は……」 教壇で授業を行う教師、ただそれを聞き流す生徒。命<ミコト>もその生徒の中の1人だった。家に帰れば予備校へ行き、予備校から帰っては寝る。 明日も授業…か… 二人は、薄暗いオフィスで話していた。 「……首尾はどうだ?」 椅子に腰かけた男が言った。 「…良好です。明日のヒトヒトサンマルに空母から出されます」 もう1人の男がパソコン画面を見ながら言った。 「……確かなのか?」 「はい。工作員のレポートによりますと、オーパイで三浦海岸、みなとみらい、それから…蒼翔高校上空を旋回して横須賀基地につく予定だそうです」 「……ならば、みなとみらいが襲い時か…」 「…ツイてないですね、この日みなとみらいには横須賀基地に輸送予定のPAC-3改があるはずです。ですからアレに襲撃をかけるなら…」 「……蒼翔高校上空…!」 「じゃあ次の問題いくぞ~」 教師は相変わらず教壇に立ち、まだ新しいチョークを持っていた。 ミコトはふと窓の外…空を見た。 何か騒がしいな… そう思ったが、どうせ横須賀基地からの輸送ヘリだろう、とすぐ思った。 しばらくして、妙な音がした。ゲームセンターのリアルシューティングゲームで出てくるような連発的な銃声がうっすらと聞こえたが、教室内は皆普通だったので無かった事にした。 が、次の瞬間 トラック12台分とも思える体積をもった巨大なコンテナが空からグラウンドに墜ちてきた。 凄まじい風や砂ぼこり、いやむしろ砂嵐が校舎を襲った。グラウンドに面していないものも、ガラスは全て割れ、生徒の何人かは廊下に飛ばされた。 …ミコトはそんな中、窓のフレームにしがみつきグラウンドから眼をそらさなかった。
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