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   俺は今日、京の都を発つ。  主上の命により、伊予に巣食う妖かしを討伐する為だ。    奴の実態が何かは分からない。風の噂では大蛇だ龍だと騒がれてはいるが。   「久義様、どうか……どうか生きて帰ってきてくださいませ」    妻が産まれたばかりの子を抱いて、羅城門まで見送りに来てくれた。女の足では、さぞ疲れる道程だろうに。   「分かっている。主上の命だが、おまえと可愛い子供の為でもあるのだ。この任務を遂げ、都に帰って来れば、おまえにももう少し楽をさせてやれるだろう……一度、我が子を抱かせてはくれまいか?」    男が、武士がすることではないと分かっている。だが、どうしても一度我が子を抱いてみたい衝動に駆られたのだ。   「父上は伊予に行って参るぞ。母上を困らせるなよ」    名残惜しいが、腕の中の温もりを妻に返すと、俺は僅かな供を連れ、都の外へと歩み出す。   「いってらっしゃいませ……」    妻の声が微かに震えていた。   「東天を守りし青龍よ、どうか俺にご加護を!」    雲一つない空に俺の声が響く。  我が子に触れ、青龍に祈り――溢れる勇気を手に、俺は発つ。  
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