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ある日私はカムイにこの何もない田舎が一望出来る高い丘の上に呼ばれた。
時刻は4時過ぎ。
あの丘からは山の谷間に落ちる綺麗な夕日が見える時。
私はいつものように愛のある言葉をささやかれ愛し合うものなのだとばっかり思っていた。
しかしその日は全てが違っていたの。
彼は約束の時間になってもそこには現れなかった。
その代わりそこにやって来たのは必死の形相で走ってきたカイルだった。
カイル「ユ,ユウナ…兄貴が…兄貴が…!!」
私はひとまず過呼吸になりそうなカイルを横にさせ介抱しようとした。
だけどカイルは私にそんな事する時間は無いと言わんばかりにポケットから一通の手紙を出し私に突きつけた。
荒い呼吸のせいで会話の出来ない彼だったが,私を見つめるその瞳は手紙を読めと言わんばかりに訴えかけていた。
カイルが私に渡した手紙。
それはカムイからの物だった。
私はその手紙の中身をすぐに確認した。
そして落胆した…。
彼はこの村を出て行ったのだ。
その事を私とカイルにだけ告げて誰にも知られないように旅立って行ったのだ。
受け止め難い事実に私はしばし呆然としていたがいつの間にか瞳からは大粒の涙が溢れ出していた。
この涙は止まるのかな??
そんな風に思ってしまうほど涙は溢れ続けた。
カイル「行って…今すぐ走って…兄貴のとこに。今なら…まだ…間に合うかも…。」
カイルの言葉に私は我にかえった。
そうだ…
私は確かめなければ行けない。
なぜ彼が旅立つのかを。
そして…
出来る事ならば彼を止めたい。
ずっと私のそばにいてもらいたい。
その気持ちだけが私を突き動かす。
そして私は走りだした。
愛する彼のもとへと。
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