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彼は行ってしまった。
私は去っていく彼の後ろ姿をずっと眺めていた。
その姿が見えなくなってからもずっとずっと見えるわけない彼の姿を見つめ続けた。
それから2時間後。
なぜか私の心は先ほどと打って変わってなんだか清々しい気持ちに変わっていた。
なんで突然こんな気持ちに??って思ったけど,理由はすぐに分かった。
彼の旅立ちを自らが見送れたからなのだと思う。
そんな事を考えながら私はベッドの上で体育座りをして,まだ痛む足の甲の傷を人差し指で傷があまり痛まない程度にボーッとしながら触れていた。
ドタドタ!!
突然廊下を走る回るような音が私のいるカムイの部屋まで響いてきた。
その足音がどんどん私の所まで近づいて来たと思った瞬間,バンッ!!と勢いよくドアが開いた。
カイル「兄貴ッ!?いるのか!?」
そう言い辺り見回しながらカイルは兄ではなく私の姿を確認すると驚いた顔をした。
カイル「ユウナ!?なんでこんなとこに!?それになんだよその足のケガは!?」
カイルは心配そうな顔をしながら私に歩み寄ってきた。
私はカイルにむかい大丈夫と一言言い,不安にさせないよう,まるでカムイのように笑ってみせた。
カイル「そうか…。」
カイルは私の足先にしゃがみ込み,足のケガを眺めていた。
しかしその瞳は私に聞き出したい事があるように見えた。
ユウナ「私…ちゃんと会えたよ。カムイに。」
彼がその事を聞いてくる前に私が答えていた。
カイル「そっか…。家には来たの??」
ユウナ「来たよ。ケガした私をここまで送ってくれたの。」
カイル「そっか…。良かった。ユウナが兄貴に会えたんなら。」
そう言うとカイルはその場に膝をつき,うつむいてしまった。
ユウナ「カイル…。」
私はカイルを抱きしめる。
するとカイルは静かに肩を揺らし,涙を流した。
カイル「兄貴…バカヤロウ。なんで俺に一言も無しに行っちまうんだよ…。」
そうだ…
本当に辛いのは唯一の家族がいなくなってしまったカイルなんだ。
私がしょげていてどうする。
この子は私が守る。
カムイの代わりにはなれないかもしれないけど…それでも私が少しでもこの子の支えになってあげないと。
カムイ…カイルは私に任せて。
そして…絶対無事にこの村に帰ってきてね。
カイルを抱きしめる私の腕は自然と強くなっていた。
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