仕事

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『電話口だと解り辛いだろう』 そう言って男はビルの住所を私に告げた。 場所については わかるようなわからないようなたどたどしい記憶だったが 取り敢えず向かう、と伝えた。 電話を終えた私を 弟は黙ってじっ、と見ていた。 私は何故だか罰の悪い気がして弟に言い訳するように ひたすら喋り出した。 お姉ちゃんちょっと出掛けてくる や、何かあるとかじゃなくて 友達、の家に行くだけだから 聞いてもいないのに 私はどうしてこんなに焦っているのだろう そわそわしている私を見て 弟は 『いってらっしゃい』と優しく笑った。 その笑顔が嬉しい反面 とても苦しかった
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