後戻り

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「あ…いえ」 そう言ってはみたものの 声と顔がついていかない。 『おや…その表情、どうやら私のせいみたいですね』 男の含み笑いは尚も続く。 『まあ、紗英さんなら その表情、 とても魅力的ですよ』 「私の名前…どうして」 男の手が 優しく私の輪郭を撫で回す 頬で止まった掌からは 体温が感じられなかった ひやりとした感覚と ぞくりとする感触に 強い嫌悪感と どうしてか うっとりするような高揚を 覚えていた
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