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店の外で正人が待っていた。
麻子は小走りで、正人に近づく。
「奥の席に美紀がいただろ」顔色一つ変えず正人は言った。
麻子はだまってうなずいた。
この場合、何て声をかけたらいいのか?
「大丈夫?」と言うのも変だ。
美紀の隣に居た、男の存在に正人は気付いていないかもしれないし。
正人の言葉を待った。
「美紀はあの男とも付き合っている。いつからなのかは知らないけど。しかも、男は妻子持ち」
正人は、淡々と言った。
正人は既に、あの二人の関係を知っていた。
それもかなり前から。
「どうして?どうして平気な顔をしていられるの?美紀が男と一緒に居たの知ってて…どうして黙って店を出てきちゃったの?」
「どうしてかな…。なんか、邪魔しちゃ悪いって思ったのかもな」
そう言って正人は寂しそうに笑った。
麻子は言い様のない怒りが込み上げてきた。
「正人も、美紀も勝手すぎるよ!もう知らない!私帰る!」
正人を置いて、ズンズンと歩き出した。
「お、おい。ちょっと待てよ~。麻子、まてったら」
正人は慌てて、麻子を追いかけた。
麻子は正人の声を無視して歩いた。
麻子が怒る理由………
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