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「行って来ます」
朝、家を出る時に誰に向けて言うのか、誰でも習慣化している挨拶。
この言葉にはどれだけの意味が込められているのか。
行って、また帰って来るよ。
ただそれだけ。ただそれだけのことなのだが、この時の俺には妙に引っかかった。
これが、最後の挨拶になるような気がしたから。
俺の蓮、と言う名前に込められた意味はない。
小さい頃、母親に名前の由来を聞いてみたら、「私、睡蓮の花が好きでね。語感も良かったし」
と言われ、少々落胆した記憶がある。
俺はいつもどおり中学校来の友達、橋本 雄太と待ち合わせをして、いつもどおり公立の高校に向かった。
そしていつもどおり二年生の階に行き、いつもどおりに三組へ行き、自分の席に座り、授業を受けた。
異変が現れたのは、昼を過ぎた五時間目、国語のガマガエルと異名をとる藤本先生(58)の相変わらず催眠術の様に眠い授業を聞いていた時だった。
相変わらずの度を越えた催眠術にもはや隠す気も無く爆睡している雄太を尻目に、俺は何を見るでもなくただぼーっと空をみていた。
うん、いい天気だ。
その晴天で、ちらほらと雲を見掛ける程度だった空が、急に真っ暗になった。
雲が出て来て天気が崩れたわけではない。
別に日食が起きるとニュースでやっていた訳でも無い。
ましてや飛行機が飛んできたわけでもない。
では、何か。
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