崩壊…そして、旅立ち

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辺りは惨劇だった。 そこらここらで悲鳴があがり、人が倒れて行く。 誰が倒したのだろうか、ゴブリンも倒れていた。 だが、圧倒的に生徒の倒れた姿の方が多い。 中には、すでに人の形を持っていない者もいた。 その状況の中を、全力で駆け抜ける。 いつも、三人でサボっていた秘密の場所へ。 そこは校舎の中にも関わらず、中庭のようになっており、木の蔓がスゴい量で絡み合っていた。 中はせいぜい教室四分の一の広さ。 奥に扉が一つあるが、押しても引いても開きやしない。   二人で校舎をウロウロしていた時、偶然蓮が見つけたものなのだが、未だに誰も来た事がない。 うまく潜り込み、安堵の息をもらす。 「どうなってんだ?」 未だ混乱気味なままの俺が問う。 「俺に聞くな」 素っ気なく返された。 沈黙が流れる。 何となく辺りを見回す。 かすかに扉が光っているように見える。 もしかして…と扉を開けようとするも、やはり開かないようだ。 ため息をついた後、二人には再び沈黙が訪れた。 「俺、ちょっと見て来るわ」 いきなり雄太が言った。 「あぁ…やっぱ由佳ちゃんが気になるか」 由佳とは、雄太の幼馴染み。付き合っているわけではないが、相当仲が良い。 クラスが違うのでこの状況ではどうしようも無かったが、やはり気になる。 「よし、俺も行く」 そう言った俺を雄太は制した。   「お前は、ここで待ってろ。あいつが来たときにすれ違いになったら困るだろ」   有無を言わせない雄太の口調に俺は渋々納得し、「無理すんなよ」とだけ、声を掛けた。 その言葉を背に、雄太は秘密の場所を抜け出して行った。
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