電車の中で

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  この鉄道は駅に駅員がいないので切符を車掌に見せなくては行けなかった。   次の駅まであと5分。   勉は歌を心の中で口ずさんだ。   ギュルルルルルルとサタンが相槌をうつ。   そのたび、勉も唸る。   駅まであと3分。   勉の顔は冷や汗でテカテカしてきた。   ローカルな電車で揺れが激しく、泣きそうになっていた。   駅まであと1分。   車掌が切符を回収しだす。   勉も切符を探す。   ポケットの中やカバンの中などを。   しかし、見つからない。   サタンの副作用で集中すらできない。   カバンの中も見当たらない。   駅員に聞いてみる。   き…切符……がなか……なかったら…ど……どうなるんですか?   勉は震えながらしゃべった。   その分のお金をお支払い頂くしかないですね。   駅員のこの言葉に勉は財布をとりだし、お金を揃える。   切符を探すより、こっちのほうが早い。   勉にはもう一刻の猶予すら許されない。   電車が駅につく。   その時だった。   電車が停止の為かけたブレーキでバランスを崩した勉は膝をついてしまった。   その瞬間、勉は真っ白になった。   サタンが誕生してしまったのである。   辺りは、悪臭と混乱に見まわれ混沌としたカオスに見まわれた。   だが勉にはどうでもよかった。   勉は駅にある分娩室でサタンが産まれた跡を綺麗にしていた。   勉は笑顔だった。  
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