消された兄

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「何で急に?いっつもそんなんせんかったじゃん。」 兄は笑いながら言う。 うん うん… そうなんだけど 私は俯いたまま兄に 「何時に帰ってくるん?」 と聞いた。 「明日の昼には帰ってくるで。どしたん?何かあったんか?」 私は 「今日は行かないといけんのん?」 と聞いていた。 兄は驚いたような、困ったような顔をして 「友達と約束したけぇ行かんといけんわ。ほんまに何かあったんか?」 何もなかった。 だけどなぜか その日だけ 凄く凄く、行ってほしくなかった。 勘だろうか。 私に不思議な力はない。 でもなぜか凄く凄く行ってほしくなかった。 兄は「明日には帰るけぇ」と私の頭をぽんぽんと叩き 出かけて行った。 勘だと思う。 しかもたまたま当たった勘だと思う。 兄は還らぬ人となって戻ってきた。
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