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「お邪魔します」
恐る恐る上がり込む百合華。
「適当に座ってて下さい。
まどか、何か飲む?」
「まどか林檎ジュース」
「先生は?」
「あ、お構いなく」
「じゃあ先生も林檎ジュースでいいや」
透が飲み物の準備をしている間、百合華は部屋を見渡してみる。
『久々に男の人の部屋に上がったなあ。
男の人の部屋って、似たり寄ったりなのかな』
百合華が物思いにふけっていると、透がア○パンマンの可愛いグラスを運んできた。
「この可愛いグラスは芳村君の趣味?」
百合華がニヤニヤとした顔で、透に尋ねる。
「これはまどかから誕生日プレゼントで貰ったんだ」
「ふ~ん、なるほど。
ところで、何で未成年の家に灰皿があるのかな?」
透も楓も高校三年生。
法律上、煙草は吸ってはいけない年齢である。
「いやあ…。
う~ん…。
ア、アンティーク?」
透にしては苦しすぎる言い訳だった。
「煙草…吸ってるの?」
透の顔を覗き込む百合華。
どう答えようかと冷や汗をかいていると、まどかが口を開いた。
「透は煙草吸っ…もがっ」
慌ててまどかの口を、手で塞いだ透。
「まっ、まどか、ホットケーキ食うか?」
「食べる~!」
これだけ強引に話をそらしたのだから、答えは一目瞭然である。
「もう。
学校では吸っちゃ駄目だからね。
いや、家でも吸っちゃ駄目なんだからね」
「へ~い」
あからさまに生返事をした透だった。
「透~っ、ホットケーキ~」
「あいあい、ちょっと待ってな」
透が台所に行くと、百合華は再び部屋を見渡した。
すると、本棚のところにフレームに収められた写真を見つけた。
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