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~許す心~
オレは頭の中が真っ白になっていた..
『許してくれ...許して...くれ...』
レイジは下を向き涙をこぼしていた..
オレは一瞬レイジを殺してやりたいほど憎んだ..
でも目の前に居るその男は紛れもなく、オレの大切な親友だった。
小さい頃から喜怒哀楽を共にしてきた。
世界で一番の友達だから..
オレの口から自然に言葉が出た...
『お前で良かった...』
レイジは「...えっ...?」と驚いていた。
『....お前はオレの大切な友達だ...お前の代わりに...お前の代わりに死ねるなら....』
オレは涙をこらえ歪んだ笑顔で次の一言を言った...
『...こんなに嬉しい死に方は他に無いよ...』
そう言ってオレは立ち上がり、レイジに背を向けた。
『今までありがとう...』
面会室を出る時にオレはレイジにそう言った。
面会室のドアが閉まりはじめた時にレイジがオレの名前を叫んでいた...
何度も...何度も..
曇っていた気持ちが晴れた...
すっきりした気持ちでオレは扉へと向かう...
扉の向こうには死が待っている...
でも、もう死を素直に受け入れる事が出来る..
何故かは分からない
普通なら恨むんだろう..
でも少しも恨んでなんかいなかった。
恨みや怒りが無意味だと知っているからだろう...
レイジがかけがえのない友だからだろう...
許す心...
みんながそれを持てば無駄な争いなんていらないんだ..
対立が生むのは犠牲だけ..
許す心...
それは今の世の中に欠けている、平和のための一欠片なんだ..
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