EPISODE.1「雨の夜」

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  「やっやめて、いっ…痛い…」 「またかよ…」  呆れた顔で、敬斗は悠子から目をそらした。 「…ごめん、敬斗…」  しばらくしてから、敬斗が口を開いた。 「俺、帰るわ」 「えっ、なんで?」 「なんでって…見りゃー分かんじゃん。今日で3回目だぞ?」  口調から怒った顔をしていると感じた悠子は、黙ったまま下を向いていた。 「…本当にごめん」 「お前さ…俺とやんのがそんなに嫌なの?」 「ちがっ…ただ…もう少し時間を…」 「また始まったよ…いつも時間、時間って言って…」  悠子の目からは涙が零れていた。 「1回目は初めてだったから仕方ないって思ったよ、でも2回目の時も「痛い」って言って途中で辞めたんだぞ…お前、それ分かってんの?」  悠子は何も言わず、ただ泣いていた。 「泣くなよ!泣きたいのはな…こっちなんだよ!」  悠子に言葉をぶつけるようにして、敬斗は出て行った。  玄関の扉を強く閉めた音が部屋に響いた。 「…なんでまた…失敗してんだ…」  悠子の泣く声は、雨の音で消されていく。 
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