3508人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっやめて、いっ…痛い…」
「またかよ…」
呆れた顔で、敬斗は悠子から目をそらした。
「…ごめん、敬斗…」
しばらくしてから、敬斗が口を開いた。
「俺、帰るわ」
「えっ、なんで?」
「なんでって…見りゃー分かんじゃん。今日で3回目だぞ?」
口調から怒った顔をしていると感じた悠子は、黙ったまま下を向いていた。
「…本当にごめん」
「お前さ…俺とやんのがそんなに嫌なの?」
「ちがっ…ただ…もう少し時間を…」
「また始まったよ…いつも時間、時間って言って…」
悠子の目からは涙が零れていた。
「1回目は初めてだったから仕方ないって思ったよ、でも2回目の時も「痛い」って言って途中で辞めたんだぞ…お前、それ分かってんの?」
悠子は何も言わず、ただ泣いていた。
「泣くなよ!泣きたいのはな…こっちなんだよ!」
悠子に言葉をぶつけるようにして、敬斗は出て行った。
玄関の扉を強く閉めた音が部屋に響いた。
「…なんでまた…失敗してんだ…」
悠子の泣く声は、雨の音で消されていく。
最初のコメントを投稿しよう!