Prologue ~序章~

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僕はね、そいつとはウマが合わなくってさ、事ある毎に喧嘩してたよ。 ある日、僕はそいつにからかい半分で尋ねたのさ。 「どうして君はいつも一人でいるんだい?」そしたら奴は「誰も傷付けたくないからだ。」って答えやがった。僕は馬鹿にしたような口調でまた尋ねたんだ。 「何で、いつもいつもシャボン玉なんか吹かしてるんだい?馬鹿みたいだよ?」そろそろブチ切れて暴れ出す頃だなって思ってたんだけど、あいつ「シャボン玉が俺だからだよ…」だって…!? そうさ、怒りん坊のくせに、妙に寂しがり屋だったんだ。 で、また尋ねたわけさ。「どうして君は…」って。そしたらさぁ、いつもなら「うるせぇっ」って、全身を怒りで真っ赤に染めて殴りかかって来るはずのあいつがこう言いやがったのさ。 「全てのものに理由なんてないんだ。あるとしたら…壊れやすくて美しいもの…それを見つめることができたら…それこそが全てだって気付くんじゃねぇのか?」 それを聞いた時、僕は自分の耳を疑ったよ。 「何言ってるんだ?こいつ…とうとう頭がイカレちまった」って思ってね。しばらく開いた口が塞がらなかったよ。 あの頃の僕には、あいつの言ってることが全く理解できなかったんだ。…そうさ…僕も全くもって、何もわかっちゃいない奴等の一人だったってわけさ…。悔しいけどね…。 さっき君に、偉そうに「理由」について言ったことも、実はそいつの受け売りなのさ。でも、今となっては、その時のあいつの言葉の意味が痛い程によくわかるんだ。今になって思い返してみると、そう言ったあいつの横顔は、入り日みたいに悲しくて、優しくて、そして…とても穏やかだったよ。 えっ??そいつは今どこで何をしてるかだって?? ハハハ…そいつを説明するのは、僕が何者かってことを説明するよりも、うんと込み入った話しになってくるんだけどなぁ。 何っ??どうしても知りたいって? そんなことを知りたがるなんて、君は随分と変わってるんだねぇ…。 そんなことない??いやいや…第一、僕の声が聞こえてるだけでも君は充分変わってるって!!君みたいな人間に出会うのは随分と久し振りのことだよ。 まぁいいさ…。丁度僕も仲間を待ってる最中で暇だし、いいよ話してあげてもさぁ。 それにこのお話はね、君の知りたがっている夕日にまつわる話でもあるからね…。 だけど、長い話になるよ? 君の時間は大丈夫かい?
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