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「‥今日で三回忌か…。時間が経つのも早い物だ…」
クロスは空を見上げ、寂しそうに息を吐く。
シェルはフードを後ろに下げ、両手をポケットにしまった。
「今でも、考えちゃいますよね…」
「時間を戻す事は出来ない…。結果を生かすも殺すも、私達の生き方次第だ…」
「そう考えると、『リルルさん』の生き方は良いのかも知れない」
メルはしゃがんで墓を見つめたまま、この場にいない『親友』の名を言う。
「そう言えば、リルルさんの来ませんねぇ‥。メルさんは何か聞いてますか?」
シェルに訊ねられたメルは、少し元気を無くして俯いた。
「『町』の仕事があるから来れないって手紙が来た…。‥でも、たぶん嘘だと思う」
「嘘?」
シェルはメルに聞き返す。
「‥無理もないな…。私も、妻と娘の墓に行くのは、未だに抵抗がある…」
クロスはそう言うと無言に成ってしまった。
暫く考えた後、その理由が漸く理解できたシェルも黙ってしまい、場に重苦しい空気が漂う。
「あー、ハイハイ!。私達が暗くなってどうするの。リルルさんの分まで、私達がシッカリしないと!」
見かねたメルは両手を叩いて音を立て、雰囲気を変えた。
シェルは苦笑して「すいません」と言い、クロスは「そうだな…」と相槌を打つ。
「それじゃぁ、まずはお墓を洗おうか」
「あ、僕水汲んできます」
シェル足元に合った空バケツを手に取り歩き出す。
「汲んでないの?」
水くみ場は、ここまで上がる為の坂の手前にある。
メルは既に、二人が汲んでいるのだと思っていたので、汲んで来なかったのだ。
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