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返り血を浴びた横顔が、こちらを睨んだ。
その猫の様な黄色い瞳には、黒目に沿って赤い線が円を描くように浮かび上がっている。
不気味に光るそれは獣のものでも、ましてや人間のものでもなかった。
体が凍り付く様な感覚にとらわれた。
―…!!
反射的に体が起き上がった。
心臓が狂うように動き、今までに無いくらい息が荒い。
(…夢?)
呼吸を落ち着かせつつ辺りを見回すと、閉まっているカーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。
いつも見慣れた自分の部屋だ。
(…夢…か。)
少しだけホッとする。
すると夢の内容が一瞬頭に過った。
よく思い出そうとしたが、大部分がモザイクが掛かったようにぼんやりしている。
ただ、あの瞳と剣ははっきり見えた。
(…マヤ……?)
響いた声もまた、耳に残っている。
言い様のない恐怖が心を支配していく。
震えるのを必死に抑えようと、自分の体を腕で抱き締めた。
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