千の偽り、万の嘘

2/2
前へ
/5ページ
次へ
さっきまで聞こえていたあの笑い声は、聞こえない 関西弁独特の訛りで話すあの低くて耳に残る声も、聞こえない 亀の字、って僕を呼ぶ声ももう聞こえない。 静まり返った食堂車に、もうあの金色は存在しないのだということを思い知らされる。 狭いと思っていた食堂車も君がいなくなっただけで、随分殺風景になって広く感じる。 …こんなに広かったなんて君がいた時は気付かなかったな。 いつまでもクマちゃんと叫び続けるリュウタの声 僕は一切窓の外を見ることは出来なかった。 叫んだりしないし叫べない 哀しさや寂しさは言葉すらも発させてくれなくて。 背筋が凍りつきそうに冷たい でもいつまでも悲しんではあげないよ。 僕たちには時間がないんだ。 今だって指先が消滅の時をカウントダウンしてる だから、君が必死で守ろうとしたものの為に、僕も賭けってやつをしてみるよ。 キンちゃんが格好良く最後を決めちゃったんだから、僕も負けてられないしね。 君だけにいい格好はさせないよ 守りたいものの為に、だなんて詐欺師の僕には相当似合わないものだろうけど、たまにはそうゆうのも悪くないかな。 但し、僕はその為には手段を選ばないけどね。 歪んだ方法でしか君の示した道を歩めない僕を君は嘆くかな?それともお前らしいな、なんて笑うかな。 キンちゃんはお前らしいって笑ってくれるかもしれないけど、皆は凄く怒るだろうな。 リュウタはカメちゃんの馬鹿!とか膨れそうだし。 先輩は…いつもの事か。 楽しかったよ、皆がくれた皆といる時間 キンちゃんが言ったように僕らに過去という思い出はないけど、良太郎や皆といた記憶は残ってる。 こんな僕でも“思い出”っていう宝物を作ることができた。 僕は皆みたいに素直に謝るなんて格好悪くてできないから、その分僕を心から嫌になるくらい僕を憎んで。 僕は他人の憎悪の念には慣れているから何て言はないしね ………でも、何でだろうね。 さっきから震えが止まらないんだ。 …………怖い?この僕が? ねぇ良太郎。これが君に教える最後の嘘だから、忘れないでね。 僕の嘘は嘘の為の嘘。 千の偽り、万の嘘。 先輩、リュウタ。 良太郎と愛理さんの事、後は宜しくね?
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加