その先

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 何でかしら?  絶対、見覚えあるわ。この場所……。  そうやって暫く考え込んでいたあたしの耳に、がちゃり、とドアが開かれた音が聞こえた。  その音に驚いて、振り返ろうと動かし辛い体をひねった。  この時目に映ったのは、あたしの手――だったもの。そこに在ったのは、しなやかで柔らかい腕でなく、硬く、てらてら光を跳ね返す茶色い、虫の手だった。  ――嘘。  嘘だ。  だって、有り得ない。  理解できない現実を受け止められずに、思考と動きは完全に止まる。  鋭利な爪が、布の隙間に突き刺さって、抜けない。    
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