出口

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 息が苦しい。  そうだ、あたしここからでなきゃいけないんだった。  髪の毛ならまたきっと生えてくるもの。何故無くなったのか、なんて今はどうでもいいわ。  だって、今は生きることを最優先しなくちゃいけない。  何百歩歩いたのかしら。  心なしか、少し周りが明るくなってきた気がする。  相変わらず正面は見えないけど、あたしのおかしな視界は、ぼんやりと辺りが分かるまでになった。  周りを覆っていたのは、まるでテントみたいな白い布。  上も下も、布なのね。  ほの暗くみえるその布は、黒い横皺が幾重にも重なって、不安になるくらい幻想的な空間を作り出す。  なんだったっけ。  そうだ、モンゴル。  モンゴルのパオみたいね。  上の布が、あたしの背中に擦れて出来た新しい皺を、作っては消して、作っては消していく。
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