出口

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 一歩、二歩。  歩を進めるにつれて、確かに明るさが増していく。  ほの暗いと感じた周りの布は殆ど白くなり、心なしか空間も広くなってきたような気がする。  もうすぐ、もうすぐだわ。  ゼイゼイと恥ずかしい呼吸をしながらも、進むペースは速くなった。  出口が見えた。  半円のような形の出口。  息苦しさも、今は消えていた。  よかった、これできっとあたしの部屋に戻れるわね。  今日は楽しみにしてた彼氏との記念日だもの、絶対会社に行かなきゃ。  おめかしをして、あの人に綺麗だね、愛してるよ、って言ってもらわなきゃ。    
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