この世界のドラゴン

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「お、やっと起きたか。」 狼男は起きたドラゴンの頭を撫でた、かなり懐いているようで自分から頭を掌にすり寄せていた。ますます僕のドラゴン像が崩壊していく。   「あの、これって本当にドラゴンですか?」 僕は素直に自分の思う気持ちをぶつけた。 「まあ、ドラゴンって言ってもこいつはまだ子供…いや、赤ん坊だからな。大人になればおっかなくなるぞ。」   僕は狼男の言葉に内心ホッとした。 するとドラゴンは急に僕の方に振り向き、威嚇しはじめた。 <ぐるるる> 瞳は赤く、鋭い牙をむき出しにし、今でも襲い掛かりますという感じだ。だが、すぐさま狼男がドラゴンを抱き上げた。   「こら、威嚇せんでええ、お客さんなんだから。」 狼男が言い聞かせ、また机の上に降ろすと威嚇をやめて僕に近づいてきた。 まじまじと僕の顔を見つめているが、やっぱりドラゴン、怖い。 「大丈夫、噛み付かれても歯形が少し残るぐらいだからな。」 それを属に言う危ないというんですよ。   「ううっ…怖い。」 しかし、そういいながらも僕は手を差し伸べ、頭を撫でた。すると自ら頭を僕の手にすり寄せてきた。 <ぐぅ…> 僕が手を離すと、また僕の顔をじっと見つめていた。「すっかり慣れたみたいだな。」 狼男がどこから出したのかわからないが、クッキーを食べていた、食べている音に反応してドラゴンが振り返り自分で皿からクッキーを器用に口にくわえて、そのまま丸呑みにした。 「こうみると可愛いもんだろ?町なんかに行くとこんなちっこいのはいないぞ。」 ふと狼男の言葉に自分の本来の目的を思い出した。僕は狼男に聞いた。 「あの、僕町に行きたいんですが、道がわからなくて。」 すると、狼男は答えた 「町ならこの街道をまっすぐ突っ切れば着くぞ。だがこっからだとドラゴンに乗ればほんの数十分だか、歩くとなると一日はかかるぞ?」   それでも僕は行くつもりだった、だが町に行ったところで行く宛てもなければお金もない。元の世界に帰る方法についてはまったく考えてなかった。すると狼男は不意に閃いた。 「お、そうだ。ここで働かないか?」
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