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序章-暗《惨》殺者-
空間を包む暗闇の度合いを、同じく暗闇に関連付けて表すとすれば――そこは黙って数分程立っていないと、どこに何があるのかさえ全く判別出来ないくらいの、それは深い闇であった。
空間の壁に寄り掛かって立つ一人の男。
男――後ろに軽く流された金髪と、鮮やかな緑の目。襟の付いた黒のシャツに、眩しい真紅のパンツがロックな印象を出している――は、ただひたすらに自身の足元を見つめている。
どうやら考え事をしているらしい。男はその体勢のまま微動だにしなかった。
不意に、男が顔を上げる。その表情には、小さな不安が見え隠れしていた。
虚ろに揺らめく――緑の目。
男は一体何に対して不安を感じているのだろうか?
身体の震えを抑えるかのように、添えられた手へ伝わる布の感触。
男が身に付けている、真紅のアームウォーマーがその正体だ。
それと、首に巻かれた真紅の細長いストール。これらは男にとって、とても大事なものなのである。
何故か。それは――『代々受け継がれてきた物品』だからだ。
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