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春(拓の章)
俺「悪いな。命日に来れなくて。自分の中のいろんな物を整理してから来ようと思っててさ。時間かかっちまった」
俺は綺麗に長方形に切り取られた灰色の石の前で手を合わせた。
俺「まぁ整理ってもあんま出来てねぇんだけどな。だけどとりあえず卒業式終わったから来ようと思ってな。へへっ」
今年の春は暖かい。
大志が眠っているこの場所の雪も綺麗に無くなっていた。
俺「そうだ。忘れるとこだった」
俺は学ランの胸ポケットから煙草を取り出した。
大志が吸っていた銘柄。
まだ開いていない箱を開け、1本取り出し、火をつけて墓の前に置いた。
そしてもう1本取り出して口にくわえ、さっき置いた煙草のとなりに箱を置いた。
俺は自分がくわえた煙草に火をつけ、ゆっくりと煙を肺に入れゆっくりと吐いた。
少し強い風が吹き、煙を一瞬にして消し去った。
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