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暗く、肌寒い暗闇の中。
時折下にある敷き詰められた石畳に滴り落ちる雫の音。
暗闇に漂う湿った匂いの中には土の香(か)も混じっているのを私の鼻が感じ取る。
それは不快ではないけれど…さすがに陽が当たらない場所なだけに、少々カビ臭くも感じるのはいただけない。
未だに何故『アレ』がこのような場所を好むのかがどうにも私には理解出来ずにいた。
…押し込んだのは私だけど。
小さく肩を竦ませて、手のひらに収まる小さな箱から手探りで一本取り出して側面に力を込めて擦る。
一本の棒に揺らめく、ゆらゆらと頼りない小さな火。
例え小さな火だとしても、私に纏わりつくような暗闇を引き剥がすのには十分。
黒一色に塗りつぶされた私の視界をオレンジ色の火が照らし、狭い世界を映し出す。
その火を非常用として置いてあった太い蝋燭に移しながら、この狭い世界の中心に移動してスカートを気にしながらぺたりと座る。
そして幾度となく積み重ねてきた蝋の山に新たに垂らし、その場所に蝋燭を固定させ…。
何もない筈のこの場所に照らし出される一つの影を見た。
「………見ーつけた」
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