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そうして刃の軌跡のように、傷からはジワリと赤い血が滲み出す。
指が違うけれど、それは赤い糸のように見えてしまう私はある意味“末期”なのかな…?
そんな事を考えながら指先を這うかのように伝う、『私の赤い糸』を見つめていた。
そのままぼんやりとしていた私は、ふと聞こえてきた音に指先からその存在へと目を向けて…うっすらと口元に孤を描いた。
「どうしたの…これ見ただけで、喉がもっと乾いちゃった?」
“衝動”を堪えているのか、少々荒い息遣いが地下室内で小さく反響する。
それに余程体に力が入らないのか…立ち上がる事無く『ペット』は石畳の上をゆっくりと這いずって来た。
長い前髪から見える物欲しそうな目を向けて、手を私へと突き出して…。
そんな様子にナイフに付いた血をティッシュで拭いながらふぅ、と溜息をつく。
「そんなに力が入らないの?……力が入らないからって言っても、流石にそれは怖いよ」
それは“人間”たる私には滑稽な姿に見える。
…『ペット』にとってはそれが重要な事だとしても、ね。
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