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濡れて蝋燭の火の光を弾く人差し指には…浅いが、二本の牙の痕があった。
血が滲んでいないので、どうやら本格的に咬まれる前だったようだ。
…さすがに危なかった。
今更ながら背筋がスッと冷たくなる。
その痕をじっと見て、その視線を興奮状態にある『ペット』へと向けた。
「……私、始めに言ったよね…?咬むんじゃなくて、舐めるならいいって。アナタはそれでもいいって言ったよね…」
ゆっくりと『ペット』に歩み寄り、目の前で膝をついて…トン、と『ペット』の顔の横に両手をつく。
目は『ペット』へと向けたまま。
端から見れば、まるで私が迫っているかのような光景だろうけど…全く違う。
だって、これは。
───…『躾』、だから
「私、言ったよね…もし咬んだりしたら私の血は一滴もやらないってさ?」
「………」
微かに、『ペット』の瞳が戸惑いに揺れた。
その反応に私はスッと双眸を細めて見せる。
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