ふたご事情

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俺は最終確認をし、コウのネクタイを片手に階段を駆け下りた。 ちょうどその時パンの焼けたチンという音が聞こえた。 「あ、おはよ!ちょっと焦げちゃったけど我慢してね!」 「おはよう。ん、平気。ありがとう。」 椅子に掛けてテーブルに目をやると、食パンの他にスクランブルエッグとコーンフレークが添えてあった。 おそらくスクランブルエッグは本来卵焼きになるはずのものだったのだろう。 以前俺が挑戦したとき同じようになったのを思い出した。 コーンフレークはそのまま牛乳を飲めない俺たちのために心弥が発案し、それ以来毎朝出るようになった。 和食だろうとお構いなしに。 そして食パンにはピーナッツバターが塗られていた。 俺は何とも言えないような感覚にとらわれた。 「コウ…」 「へへっ。僕はジャム派、ゴウはバター派だもんね!」 変なところで気を遣うんだよね。 「…ありがとう。」 「どういたしまして!」 上手く表情に出せないが、せめて言葉に出して伝える。 いつからこうなってしまったのか。 昔の俺はどんな風に感情表現をしていたのか… 原因は… 「ゴウ?」 「え…?あ…」 「どうかしたの?」 「なんで?」 「なんかぼーっとしてたから。」 「何でもないよ。」 「そう?」 コウはいつでも俺を見てくれている。 傍にいてくれる 。
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