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―…
「ぅ…うぅっ…わ…わた…しっ…」
何の涙なのか。
恐怖から解放されたという安心感?
好きでもない男の人に無理矢理口づけされたという嫌悪感?
それとも他の何か?
とめどなく溢れ出る涙。
「渚ちゃん…」
リョウくんが優しく背中をさすってくれる。
「ごめんね…もう…大丈夫だから…」
リョウくんが謝ることなんて何一つないのに…
「うっ…うぅ……」
それを伝えることさえできなかった。
*side...Akane*
早く…
早く…!
手遅れになる前に…!
「ぐっ……くそっ…!」
「………。」
―…
「いくらなんでも無茶だ!こんな体で!」
「頼む…!」
「さすがにその頼みは聞けねぇ!お前のためだ…」
違う。
「俺のためなんかじゃない…」
「茜…!お前っ…こんなときぐらい言うこと聞けよ!」
「ちょっと、アキ…」
ゴウが制するのを余所目に昭斗は続けた。
「怪我人は黙って人の言うこと聞いとけって言ってんだよ!」
「アキ、やめなよ!」
「そうですよ!とにかく早く手当てをしないと…」
「だから、そう言ってんだろうが!」
だったら…
その怪我人の前で大声出して怒鳴ってんじゃねぇよ。
「…怪我してたって…俺の方が…強い…」
「何だと…」
「試して…みるか…?」
「………。」
端から見たらすげぇ険悪ムードだろうな…
コウたちにもそれは十分に伝わっているようだし…
「女一人救えないなんて…クズだ…」
「このままだとお前…本当に……取り返しのつかないことになるかもしれないんだぞ!」
あぁ…
気遣って遠回しに言ってくれてるんだな…
「渚を救えないのならっ…
死んだ方がマシだ!」
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