宣戦布告

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―… どうしよう… 全く涙が止まらない。 「渚……」 リョウくんだけでなく里香ちゃんまで傍に来てくれて… 二人に迷惑かけてる… と、思い込んでいたけど… 「なぎ…さ……」 リョウくんでも里香ちゃんでもない声が私の名前を呼んだ。 ゆっくりと顔を上げると、そこには… 「あかね…くん……?」 涙で視界がぼやけていたけど、確かにそれは茜くんだと認識できた。 でもよく見ると、いつも目にしている茜くんの姿ではなかった。 「うそ………」 制服があちこち擦り切れていて、そこから赤い液体が滲んだ見るからに痛々しい姿の茜くんだった。 「茜…くん……茜くん!」 私は周りを見る余裕もなく、ただひたすら茜くんだけを目指した。 「渚…どうして…泣いてるんだ……」 茜くんに駆け寄って初めて昭斗くんに支えられているということに気づいた。 「これはっ……そんなことより…!」 早く手当てしなきゃ! 救急車呼ばなきゃ! と、続けようとした瞬間… 「そんなこと…なんかじゃない……一体誰が…お前を泣かしたんだ…!」 「喋っちゃ駄目だよ!昭斗くん何やってるの!?早く救急車を…」 「浜中だよ…」 私の言葉を遮ってリョウくんが茜くんに教えた。 「ごめん…僕…一足遅くて…っ……守れなかった…!」 リョウくんは唇を噛み締めて涙を流しながらそう言った。 「リョウ……」 茜くんは一言反応すると… 「教えてくれて…ありがとう…」 と静かに言った 。
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