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*side...Akito*
「…昭斗…はぁ…降ろして…くれ……」
茜を降ろしたら、すぐ救急車を呼ぼう。
「…分かった。」
俺はゆっくりと茜を降ろした。
そして一刻も早く救急車を呼ぼうと携帯を取り出そうとした瞬間…
「いいっ……呼ばなくて…いい…」
震える手で俺の肩に触れそれを制した。
「あいつに…バレたら…はぁ…面倒なことにっ…なる……」
分かってる…
分かってるけど!
それよりも…
お前の命の方が大切に決まってるじゃねぇか…!
「渚…もっと…近くに……」
消え入りそうな声で渚を呼んだ。
まるで最後の力を振り絞るかのように…
ポタポタと音を立てて赤い滴が落ちる。
そして小さな水たまりができるのを、俺はただ呆然と見つめていた。
渚がしゃがみ込み、震える手でそっと茜に触れると震える声で…
「茜くん…茜くん!しっかりして!やだよっ…」
と悲痛の声を上げた。
「だから…はぁ…死なないって……」
茜は力なく笑い渚の頬に右手を伸ばそうとした。
だが…
「いやぁ…っ!!」
「茜っ!」
その手は渚の頬をすり抜けるように…
触れることなく降ろされた。
「茜!」
「茜っ!」
「茜先輩!」
「茜!」
「茜先輩!」
全員が茜の名前を呼ぶが…
茜が目を開くことはなかった…
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