親切な人はお坊ちゃま

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やばい。 逃げなきゃ… 逃げなきゃいけないのに… 足が震えて動かないとはこのことだと思った。 「なぁ?」 一人の男が私の腕を掴んだ。 やめて、離してと抵抗するが女の力で適うはずもない。 怖い… 嫌だ。 誰か助けて… お父さん! 目を瞑り、そう願った矢先だった。 「おい。」 え? お父さん? 「その汚ねぇ手離せよ。」 お父さん? な訳ないか… 誰だろう。 暗くてちょっと見えないけど… 「離せって言ったのが聞こえなかったのか?二度も言わせやがって。」 「あぁ?…お、お前!」 「おい!逃げるぞ!」 「ま、待てよ!」 二人の男は焦るように去っていった。 この場合、逃げ帰ったと言った方が的確であろうか。 「逃げられやしないさ。この俺からはな。」 何か呟いたようだったが何と言ったのか分からなかった。 そんなことより助かった… お父さんじゃなかったけど。 ていうかこの人何者!? 別に拳を浴びせた訳でも蹴りをかました訳でもないよね。 ただ一言言っただけで追い返しちゃうなんて… もしかしてこっちの人の方が危ない人!? そう思い始めると怖くなり、徐々に逃げる姿勢に変わる。
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