個性的な後輩たち

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「渚さん?どうかされたんですか?」 「あ、えーと…数学って難しいよね。」 トラブルメーカーの灯也くんである。 とりあえず笑って誤魔化した。 「数学というよりアレは哲学に近いですけどね。」 「確かに。先生って一応桃兎(ももと)大学出てるみたいだし、やっぱり教え方は一流だね。難しいけど。」 サラッと言ってくれた灯ゴウくん。 桃兎大ってあの? 人は見掛けによらないとつくづく思う。 「おい茜。今日はオール授業出んのか?」 「ん?…まぁ。」 まぁってなぁ、と少々呆れた様子の昭斗くん。 ホントに元気なさそう… 大丈夫だろうか。 「渚ちゃん。」 「は、はい!」 「ちょっといいかな?」 「はい!」 心弥さんからの呼び出し。 何かしたっけ? なんだろうと思いながらも廊下に出た。 「昨日茜に何かされた?」 「え?いや、あの…」 なんでなんでなんで!? 誰にも話してないよね!? 顔に出ないように何とか押さえ込む。 「あぁ、ごめんね…唐突過ぎたよね。いや、何もないならそれでいいんだ。」 「いえ、別に何もないですよ!ただ…」 「…ただ?」 「家にわざわざ来てくれて、夜はきちんと施錠するように言われただけです!」 何言ってんだろ私… 「茜くんって本当に優しいですよね!」 嘘ついてる… 何故だか分からないけど。 今は言わない方がいいような気がしたから… 今この瞬間の時間(とき)を守りたかったから 。
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